ここ一番で力を出す!パフォーマンス向上の補助栄養
🗣️ 導入|土台は“いつもの自分”、サプリは“最後のひと押し”
「あとちょっとで届くのに…」本番でそう感じたこと、ありませんか。
その“あと一歩”を押し出すのが、食事・睡眠・練習=土台のうえに重ねる補助栄養(サプリ)。魔法じゃないからこそ、試す → 合う量とタイミングを掴むが大事です。
合言葉は、「いきなり本番で初使用はNG」。最低でも4週間前から練習でテストして、手応えをメモしていきましょう。
- レースや試合で“最後の粘り”が欲しい
- スプリントや重量の伸びを止めたくない
- 10km〜フルでペースが落ちがち
⚠️ まず確認|安全・相性・ルール
- 体調や服薬がある人は、導入前に医師・薬剤師へ。
- 競技ルール(ドーピング)は必ずチェック。迷ったら Informed-Sport や NSF の認証品を。
- 合う・合わないは個人差アリ。カフェインで寝つきが悪くなる、β-アラニンでピリピリ感が出るのは“あるある”。練習で確かめるのが正解。
🧱 まずは土台|プロテイン=“飲むおかず”
ねらい: 筋タンパク合成を後押し、疲労回復を早める。
目安: 1.6〜2.2 g/kg/日。1食20〜40 gを「朝・練習後・就寝前」に分けると安定。
使い分け:
- ホエイ=吸収速い。練習後〜60分の“すぐ食べ”に。
- ソイ=ゆっくり。食間の橋渡しや体質に合わせて。
コツ:「今日は食事が薄いな…」という日に“飲むおかず”として一杯追加。おにぎり・バナナを一緒にどうぞ。
🧨 筋力・瞬発を上げたい(短時間高強度)
クレアチン|“もう1レップ”の押し上げ役
「最後の2〜3レップが出せた」「ダッシュの失速が遅れた」――体感でわかりやすいのがクレアチン。
- 何が起きる? ATP(瞬発のエネルギー)の回復が速まり、最大出力とレップ持久が底上げ。
- 摂り方(どちらでもOK)
- ローディング:20 g/日(5 g×4)×5–7日 → 維持3–5 g/日
- 維持のみ:3–5 g/日を毎日。3〜4週間で満タンに。
- 感じやすい変化: セット終盤の粘り/ジャンプ・短距離のキレ。
- よくある反応: 体内の水分が増えて体重+0.5〜1.5 kg。計量や見た目がシビアな時期は計画的に。胃がもたれる人は小分け&食中で。
- やりがちNG: 本番直前に初使用/水分不足。
ミニメモ: ご飯やプロテインと一緒に摂ると取り込みがスムーズ。
🫀 持久力を上げたい(中〜長時間)
持久系の主役は、実は糖質+電解質。ここができていることを前提に、カフェインで“出力の引き出し”、β-アラニンで“ラストの粘り”を足します。BCAA/EAAは「固形が入りにくい」「たんぱくが不足しがち」な人の補助輪と考えると迷いません。
カフェイン|“きつさ”を和らげ、もう半歩を押す
「同じ努力感で、ちょっと速く・長く」。それがカフェインの一番の恩恵。反応速度や集中も上がるので、トライアスロンや長距離、球技の終盤にも効きます。
- 目安: 3〜6 mg/kgを30〜60分前(ガムなら15〜20分前でもOK)
例)体重60kg → 180〜360 mg - 使い方のコツ: レースが長い日は中盤〜終盤で一段上げる作戦もアリ。
- 注意ポイント:
- まずは1〜3 mg/kgのライト量で練習テスト。
- 就寝8時間前以降は避ける/総量400 mg/日の上限目安。
- エナジードリンク・鎮痛薬の隠れカフェインも合算。
- −120分:消化の良い高糖質+水・塩
- −45分:カフェイン3 mg/kg(タブレット or ガム)
- 走行中:糖質ジェル+電解質
- ゴール後:ホエイ20–30 g+炭水化物
β-アラニン|“乳酸の壁”にもう一歩踏ん張る
坂の区間、インターバルの後半、ロングのラストスパート――1〜4分の“きつい時間帯”で粘りが出やすくなるのがβ-アラニン。
- 仕組み: 筋内のカルノシンを増やし、酸性化(pH低下)を緩衝。
- 摂り方: 3.2〜6.4 g/日を分割して4週間以上。当日だけでは効きません。
- あるある反応: ピリピリ感(無害)。小分けや徐放型で軽減。
- 相性が良い人: インターバル主体/短い周回レース/球技の繰り返しダッシュ。
- 優先順位の目安: ロング一択の人はまずカフェイン+糖質計画を完璧に。
BCAA / EAA|“足りない日”の保険
「固形が入らない」「たんぱくがどうしても不足」という人に。
- ねらい: 主観的疲労の軽減感、筋分解の抑制“感”。
- 目安: 使うなら5〜10 gを運動前〜中に。
- 現実的なところ: 食事+プロテインで総たんぱくが十分なら、無理に上乗せしなくてOK。長時間種目は糖質+電解質のほうが効果に直結する場面が多い。
迷ったらこの順番(持久系の鉄板)
- 糖質+電解質の計画(何分で何g?を紙に書く)
- カフェイン(まずライト量で練習テスト)
- β-アラニン(4週間ロードできるなら)
- BCAA/EAA(たんぱく不足時の補助)
🧪 ミニケース集|そのまま真似してOK
- マラソンPB狙い
前週まで:β-アラニン継続/当日 −60分:カフェイン3 mg/kg/走行中:30–40 g/時の糖質+電解質 - ヒルクライム(40〜60分)
−60分:軽食+カフェイン3–4 mg/kg/β-アラニンは事前ロード - サッカー・バスケ
週間:β-アラニン/試合前:ライトなカフェイン/ハーフタイム:糖質+電解質
🙅♂️ よくある落とし穴
- 本番で初使用 → 胃がびっくり。練習で試すが正解。
- 盛りすぎ(過剰摂取) → カフェイン総量、隠れ摂取も合算。
- 睡眠を犠牲 → 夜レース以外は8時間前に打ち止め。
- 品質ノーチェック → 第三者認証・成分表・ロット番号を確認。
🧠 集中力・覚醒を上げたい(手元の精度・判断力)
「大事な場面で手が震える」「最後のパットで雑念が…」——そんなときに頼れるのが、カフェイン+L-テアニンの“静かなブースト”。
カフェインで覚醒&反応を上げ、テアニンで過覚醒(ソワソワ・手の震え)をなだらかに。結果、落ち着いた集中が作れます。
まずはこの比率(迷ったらコレ)
- カフェイン:100〜200 mg + L-テアニン:200 mg(おおよそ 1:2)
- タイミング: 30〜60分前(ガムは15〜20分前でも手応えが早い)
- 軽めに試すなら: カフェイン50〜100 mg+テアニン100〜200 mg
- 長丁場なら: 序盤は控えめ→中盤で追加(合計400 mg/日は目安上限)
目安感:ドリップコーヒー1杯 ≒ 80–120 mg/緑茶1杯 ≒ 20–40 mg(濃さで上下)
相性がいいシーン
- ゴルフ・アーチェリー・ビリヤードなど「手元の精度」が勝負
- 球技の終盤:集中の粗さがプレー精度に直結
- 戦術を要する耐久レース:判断のキレを保ちたい
よくある悩みと微調整
- 手が震える・心拍が上がりすぎる → カフェイン量を−50〜100 mg、テアニンはキープ
- 効きが弱い → カフェインを+50〜100 mg(ただし就寝時間から逆算)
- 眠りが浅くなる → 就寝8時間前で打ち止め。夜競技以外は夕方以降の追加は避ける
🧰 目的別“今日のレシピ”テンプレ
そのまま予定に落とせる3シーン。まずは1週間テスト→相性をメモ。
1)筋力PR日(高重量の日)
- 朝〜昼:いつもどおり
- 毎日:クレアチン3〜5 g(食事と一緒に)
- −60分:軽食(炭水化物+少量たんぱく)
- −45分(必要なら):カフェイン3 mg/kg
- 直後:ホエイ20–30 g+炭水化物
2)10km〜ハーフ(記録狙い)
- −120分:消化の良い高糖質+水分・塩
- −45分:カフェイン3 mg/kg
- 競技中:糖質ジェル+電解質(暑熱時は特に)
- 直後:ホエイ20–30 g+炭水化物
- ※β-アラニンは4週間前からロードを継続
3)集中勝負の日(精度・判断が要る)
- −60分:軽食(血糖の乱高下を避ける)
- −45分:カフェイン100–150 mg+テアニン200 mg
- 長丁場なら:中盤に+50〜100 mg(合計400 mg/日めど)
- 直後:たんぱく+炭水化物で回復
📝 ログの取り方(“効いたか”を数値で見る)
- 主観的疲労(RPE):10段階で記録(いつも7→今日は6、など)
- 客観データ:タイム、パワー、レップ数、心拍の立ち上がり
- 体調メモ:胃の具合、手の震え、寝つき
- 摂取量と時刻:カフェイン mg、テアニン mg、開始からの経過時間
3回分そろうと傾向が見えます。“効きすぎ”や“寝つき問題”は量か時刻が原因のことがほとんど。
🔍 1分クイック表(目的→何を・どれだけ・いつ)
| 目的 | 第一選択 | 目安量 | いつ | 即効性 | よくある反応 |
|---|---|---|---|---|---|
| 筋力・瞬発 | クレアチン | 維持3–5 g/日(ローデ20 g/日×5–7日) | 毎日(食事と) | 数日〜数週 | 体重+0.5–1.5 kg、まれに胃もたれ |
| 持久(中〜長) | カフェイン | 3–6 mg/kg | 30–60分前(ガムは15–20分前) | ◯(早い) | 動悸・胃もたれ・睡眠への影響 |
| ラストの粘り | β-アラニン | 3.2–6.4 g/日(分割) | 4週間以上ロード | △(蓄積型) | ピリピリ感(無害) |
| 集中・精度 | カフェイン+テアニン | 100–200 mg+200 mg | 30–60分前 | ◯ | 眠りに注意(就寝8h前打ち止め) |
| 不足日の保険 | BCAA/EAA | 5–10 g(前〜中) | 競技前〜中 | ◯ | コスト高、総たんぱく十分なら優先度低 |
※ どの目的でも糖質+電解質の計画が前提。ここを外すとサプリの“効き”が鈍ります。
🙅♂️ ありがちNGとリカバリー
- 初使用が本番 → 練習で3回はテスト。量・時刻を固定して比較。
- 飲みすぎ問題(カフェイン) → 合計を400 mg/日以下に、夕方以降は打ち止め。
- ピリピリが気になる(β-アラニン) → 小分け or 徐放型、量を−1 g。
- お腹が弱い → クレアチン・カフェインは食中、水分を+300–500 ml。
📌 まとめ|“効くかどうか”は準備で決まる
- 土台(食事・睡眠・練習)> サプリ。土台が整うほど、少ない量でも効く。
- カフェインは便利、でも睡眠とトレード。就寝8時間前ルールを守ろう。
- β-アラニンは“積み上げ型”。当日だけでは効かない。
- クレアチンは毎日の積み木。試合期の体重変化は計画に入れておく。
- テアニン併用で“静かな集中”を作る——ここ一番の精度が変わる。
- サプリは必要?食事では足りない“補助栄養”の真実 ─ 土台の考え方を3分で復習
- 静かに伸ばすだけじゃ足りない?動的ストレッチが“動ける体”をつくる理由 ─ ウォームアップで“効き”を底上げ
- 「その一口、遅すぎるかも?」──水分補給と“タイミング”の科学 ─ 糖質+電解質の計画づくり
- 『筋トレ後すぐ』は本当?──プロテインの種類と飲むべき“最適タイミング”完全ガイド ─ 回復を早めて練習を回す
📚 参考文献・出典
- Maughan RJ, et al. IOC consensus statement: dietary supplements and the high-performance athlete. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2018;28(2):104–125.
- Thomas DT, Erdman KA, Burke LM. Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance. J Acad Nutr Diet. 2016;116(3):501–528.
- Kreider RB, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: creatine supplementation and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2017;14:18.
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療中・妊娠中・持病のある方や服薬中の方は、導入前に医師・薬剤師にご相談ください。競技者は最新のアンチドーピング規程と第三者認証(Informed-Sport / NSF Certified for Sport 等)をご確認ください。


