冬になると、どうしても体が固まりやすくなります。
気温が低い → 筋肉がこわばる → 動きが小さくなる → さらに固まる…
という“悪循環”が自然に起きるからです。
しかし、裏を返せば──
「固まりやすい時期に、固まらない習慣をつくる」
これが翌シーズンのパフォーマンスにとって、実は大きな武器になります。
たとえば、走る人なら
- 肩の可動域が戻ると腕振りが軽くなる
- 胸椎が動くと呼吸と体幹が安定する
- 股関節が滑らかになるとピッチ・ストライドが変わる
- 足首が動くとケガをしにくくなる
など、地味だけど絶対に効く“土台力”がつきます。
そしてこの「土台」は、シーズン中にはなかなか作れません。
疲労が残りやすい時期に、柔軟性やフォームを“ゼロから作り直す”余裕がないからです。
だからこそ、
オフシーズン=体の基礎リセット期
この考え方が重要になります。
本記事では、
- 冬に固まりやすい関節
- 毎日3分でできるモビリティ習慣
- 関節別の改善エクササイズ
- オフシーズンに揃えると効果的なアイテム
まで、まとめてガイドします。
春に「あれ、動きが違うぞ?」と思える体づくりを、一緒に進めていきましょう。
🧠【第1章】モビリティとは?柔軟性との“決定的な違い”
まず整理しておきたいのが、
「柔軟性」と「モビリティ」は違う概念
という点です。
🔹 柔軟性=受動的な可動域
- 誰かに押してもらう
- 反動をつけて伸ばす
- ストレッチで伸びる幅
いわば「伸ばされる能力」です。
🔹 モビリティ=自分で動かせる可動域
- 関節を安定させたまま
- 意図した方向に
- スムーズに動かせる
こちらは「自分でコントロールする能力」。
つまり柔軟性は“長さ”、モビリティは“使える幅”です。
どれだけストレッチで筋肉が柔らかくても、
その可動域を“自力で”制御できなければ、パフォーマンスにはつながりません。
🔥 モビリティ不足が引き起こす3つの問題
① フォームが崩れて効率が落ちる
肩が硬いと腕振りが窮屈になり、股関節が硬いとストライドが伸びない。
胸椎が動かないと呼吸が浅くなり疲れやすくなります。
② 必要な筋肉に負荷がかからない
スクワットなどで「効かない」と感じる人は、
関節の可動域不足が原因でフォームが安定していないケースが多いです。
③ ケガのリスクが増える
固い関節は衝撃吸収ができません。
ランナーなら足首・膝・股関節の痛みにつながりやすい。
冬は特に、
モビリティの低下 → フォームの乱れ → ケガの連鎖
が起きやすい季節。
だからこそオフシーズンに“土台の関節”を整える意味があります。
🧊【第2章】冬に固まりやすい3つの関節
冬のオフシーズンに優先してほしいのは、この3つです。
❄️ ① 肩甲骨(肩関節)
寒さで自然に肩がすくみ、
- 巻き肩
- 猫背
- 首こり
が増えやすい時期です。
ランナーなら腕振りの可動域が狭まり、
ゴルフなら肩回旋が減り、
筋トレなら肩の位置が安定せずケガしやすくなります。
❄️ ② 胸椎(背骨の上部)
柔軟性の盲点がここ。
胸椎が固まると、
- 体幹が回らない
- 呼吸が浅くなる
- 股関節に負担が移る
特にデスクワークが多い人は顕著です。
「胸椎が動かない代わりに腰をひねってしまう」ことが、腰痛の原因にもなります。
❄️ ③ 股関節
冬の冷えで最も影響を受ける関節。
特に腸腰筋・中殿筋が固まると、
- 骨盤が後傾しやすい
- 歩幅が縮む
- お尻に力が入らなくなる
- ランニングでストライドが落ちる
さらに、捻挫や股関節の可動域制限の影響を受けやすい部位でもあります。
この3つを改善するだけで、
春のフォームがガラッと変わる人は本当に多いです。
ここから、
毎日3分でできる“冬のモビリティルーティン”に進みます。
🧩【第3章】毎日3分で差がつく“冬のモビリティルーティン”
ここから、冬に最も効果を出すための“地味だけど効く”実践パートです。
1種目あたり30〜40秒、全部で約3分。
筋トレ前・ラン前・寝る前、いつやってもOKです。
🌀 ① 肩甲骨スライド──猫背と巻き肩のリセットに最適
やり方
- 壁に背中・頭・お尻をつけて立つ
- 肘を軽く曲げた状態で、“ゆっくり”上下に動かす
- 肩甲骨が背骨に寄ったり離れたりする感覚を意識する
ポイント
- 腕を上げるより肩甲骨の動きを感じることが大事
- 肋骨が前に開かないよう、軽くお腹に力を入れる
効果
- 巻き肩リセット
- 肩周りの可動域改善
- ランの腕振りが軽くなる
デスクワークが多い人は朝と夜の2回できると理想です。
🌪 ② 胸椎スイング──“胸を回す”感覚を取り戻す
胸椎が固い人は、代わりに腰をねじってしまいがちです。
これが腰痛の原因にもなります。
やり方
- 横向きで寝て、膝を軽く曲げ揃える
- 両手を重ね胸の前に置く
- 上の手だけをゆっくり開き、背中をひねる
- 呼吸を深くしながら左右5回ずつ
ポイント
- 腰ではなく胸椎(胸の位置)を回す
- 肩が床に近づくほど胸椎が動いている証拠
- 反動をつけず、呼吸に合わせて動かす
効果
- 呼吸が深くなる
- 体幹の回旋が滑らかになる
- 肩・股関節の動きも整う(胸椎は“中継地点”)
胸椎がよく動くと、上半身の連動性が一気に良くなるため、
ゴルフ・野球・ランニングなどほぼ全競技でメリットが出ます。
🍑 ③ 股関節インナーマッスル起こし──動きの“要”を目覚めさせる
冬の股関節は、腸腰筋・中殿筋が特に眠りがちです。
❐ 中殿筋アクティベーション
- 横向きに寝て膝を軽く曲げる
- 上側の膝を“少しだけ”外へ開く
- 骨盤を動かさず、股関節だけを使う
- 片側10〜15回
ポイント
- 足は高く上げない
- 使うのは“お尻の横だけ”
→ 地味すぎて合ってるのか不安になるくらいでOK。これが正しい中殿筋の刺激です。
❐ 腸腰筋(もも付け根)の軽いストレッチ
- 片膝立ちになり、前脚に体重を乗せる
- 後ろ脚の付け根に伸び感を出す
- 20〜30秒キープ
ポイント
- 腰を反らない
- 骨盤を軽く後傾させると伸びる
- “痛い”はNG、ゆるく伸ばすのが正解
● 効果まとめ
- 歩幅が自然と広がる
- お尻が使いやすい体になる
- ランニングのストライド改善
- 腰痛予防に直結
🦵【第4章】関節別・冬の改善メニュー(目的別で選べる)
🔹 肩周りが固い人向け(肩甲骨 × 胸椎セット)
● 胸椎伸展エクササイズ
フォームローラーを使った胸椎の伸展エクササイズです。
- フォームローラーを背中の下に置く
- 両手で頭を支えながら背骨をゆっくり反らす
- 痛みのない範囲で数回繰り返す
効果: 猫背改善、肩の動きがスムーズになる
● 肩甲骨サークル
- 肩を大きく前→上→後ろ→下と円を描くように回す
- 左右5回ずつゆっくり行う
肩甲骨の位置が安定すると、腕振り・筋トレ・日常姿勢が改善します。
🔹 股関節が固い人向け(腸腰筋 × お尻)
● ヒップヒンジ習得(最重要)
スクワット・デッドリフト・ランニングの基礎動作です。
- 足を腰幅に開いて立つ
- お尻を後ろに引くイメージで上体を前へ倒す
- 背中は丸めず、太ももの裏に軽い伸びを感じるところで止める
正しいヒンジができると、
無駄な膝の負担が減り、お尻が自然に働き始めます。
● お尻ストレッチ(ピリフォルミス)
- 仰向けで片足を反対側の膝にかける
- そのまま脚を胸に引き寄せる
- お尻に伸びを感じたら20〜30秒キープ
効果: 股関節の動きが滑らかに、腰周りのハリも軽減
🔹 足首が固い人向け(背屈改善の王道)
● カーフストレッチ(壁ドン式)
- 壁に向かって立ち、片足を前・片足を後ろに引く
- 後ろ脚のカカトを床につけたまま、体を前に倒す
- ふくらはぎに伸びを感じたら20〜30秒キープ
● 前脛骨筋トレ
- 椅子に座り、かかとは床につけたまま
- つま先だけを上に引き上げる
- 15〜20回を目安に行う
● しゃがみ込みチェック
足首が硬い人は“深くしゃがめない”ことが多く、
スクワットやランの衝撃吸収が苦手な傾向があります。
🛡️【第5章】モビリティは“冬の怪我ゼロ計画”の第一歩
冬は体が固まりやすい。
だからこそ「固まらない習慣」が差をつけます。
❗ 固い関節はケガしやすい理由
- 衝撃を吸収できない
- フォームが乱れる
- 無駄な筋肉ばかり使う
- 局所に負担が集中する
ランナーで言えば、
- 足首が硬くて膝痛
- 股関節が硬くて腰痛
- 胸椎が硬くて呼吸が浅い
など、症状の“連鎖”が起こります。
🔥 冬にモビリティを整えると春が変わる
- ストライドが自然に伸びる
- 姿勢が整う
- 筋トレの効きが上がる
- ケガの確率が下がる
「地味だけど将来効く」取り組みの代表格です。
特に、40代以降・運動再開組・ランナーのような層にとっては、
柔軟性より“使える可動域”を求めているため、非常に刺さるテーマです。
🧳【第6章】オフシーズンに揃えておきたい“ケア用品”4選
冬のモビリティづくりは、正直自重だけでも十分改善します。
ですが、次のシーズンで本当に差をつけたい人ほど、
「継続しやすく、体感が早い」アイテムを取り入れています。
ここでは、“使えば効果がわかる”4つを厳選しました。
🔧 ① マッサージガン
冬の固まりやすい
- 肩
- お尻
- ハムストリングス
- 腸腰筋周辺
のケアに最も即効性があります。
● こんな人におすすめ
- デスクワークが多い
- 肩甲骨周りがガチガチ
- 股関節に詰まり感がある
- ラン後の疲労が抜けにくい
● なぜモビリティに効く?
筋肉のトーン(緊張)が下がると、
関節可動域が“使える範囲”まで広がるため。
ストレッチだけより短時間で効果が出ます。
🌀 ② フォームローラー(胸椎モビリティの王道)
胸椎は自重ではほぐしにくいため、
ローラーを使うと“ほぼ確実に動きが良くなる”部位です。
● メリット
- 背中の丸まり改善
- 呼吸が深くなる
- 肩の可動域が増える
- ランニング時の上半身のブレが減る
胸椎が動くと股関節の動きも自然に良くなるため、
全競技者におすすめできます。
🏋️♂️ ③ ミニバンド(中殿筋・腸腰筋の目覚まし道具)
モビリティと筋力の“橋渡し”に最適なアイテムです。
● 使い道
- 中殿筋アクティベーション
- 股関節外旋トレーニング
- ヒップヒンジの安定化
- 足首のアライメント改善
1本あるだけで、自重では刺激しづらい部位にしっかり効きます。
持ち運びもしやすく、コスパの高いアイテムです。
🧱 ④ ストレッチブロック(足首の背屈改善に)
足首を柔らかくするには、
“正しい角度でストレッチできる環境”が重要です。
ブロックがあると、
- カーフストレッチが深まる
- しゃがみ込みが改善する
- スクワットフォームが安定する
足首の可動域はランニング・筋トレ・日常生活のすべての土台なので、
小さな投資で効果が大きいアイテムです。
✔️ まとめ:冬は“モビリティでリセット”する最高の季節
冬は固まりやすい季節だけど、
逆に言えば「小さな改善が大きな伸びしろ」になる季節です。
- 肩甲骨
- 胸椎
- 股関節
- 足首
この4つを整えるだけで、
春のランニング・筋トレ・スポーツが驚くほど軽く感じます。
モビリティは派手ではありません。
でも、未来のあなたを一番助けてくれる練習です。
そして、コツコツ継続するためには、
ほんの少しのケア用品が“継続の後押し”になります。
冬のオフシーズン、ぜひモビリティ習慣を始めてみてください。
📚 参考文献・出典
- Behm, D. G., & Chaouachi, A. (2011). A review of the acute effects of static and dynamic stretching on performance. European Journal of Applied Physiology.
- McGill, S. (2016). Back Mechanic. Backfitpro Inc.(体幹安定性と胸椎可動の重要性について)
- Cook, G. (2010). Movement: Functional Movement Systems. On Target Publications.(モビリティと安定性の連鎖を体系化)
- American College of Sports Medicine. (ACSM). ACSM’s Guidelines for Exercise Testing and Prescription.(関節可動域とウォームアップの原則)
- Schleip, R. et al. (2012). Fascia: The Tensional Network of the Human Body.(筋膜と可動性に関する基礎研究)


