柔らかくても動けない!?「柔軟性」と「可動域」の本当の違いとは

📘運動教養コース

🌀柔らかくても動けない!?「柔軟性」と「可動域」の本当の違いとは

🚪その“柔らかさ”、動きに活きていますか?

「開脚180度できるから、私は柔軟性ばっちり!」
「体が硬いから、運動には向いていないかも……」

ストレッチやヨガをしていると、こうした言葉をよく耳にします。
たしかに柔軟性は大切な体の要素の一つ。怪我を防ぎ、動きの幅を広げるために必要不可欠です。

ですが、実は柔軟性が高い=動ける体とは限らないのです。

実際、パーソナルトレーナーの現場では、こんな方をよく見かけます。

  • ストレッチが得意で体は柔らかいのに、ジャンプが小さい
  • 股関節の可動は広いのに、走るとフォームがバラバラ
  • ヨガでは深くポーズが取れるのに、階段を登ると膝が痛む

これらの原因は、「柔軟性」と「可動域」の混同にあることが多いのです。

本記事では、運動初心者から中高年のアスリートまで、すべての「体を動かす人」に知ってほしい
「柔軟性」と「可動域(ROM)」の違いと、動ける体に必要な条件をお伝えします。

🧠理論①|「柔軟性」とは何か?ただ“伸びる”だけでは足りない

「柔軟性」とは、筋肉や腱などの軟部組織がどれだけ伸びるかを示す性質です。
静的ストレッチなどで、どれだけ深く体を曲げられるかを見るのは、まさにこの柔軟性の指標です。

たとえば…

  • 前屈で手が床に届くかどうか
  • 開脚がどこまで開くか
  • 腕がどれだけ後ろに回るか

こうした動作は筋の伸張性によって決まります。

ただし、ここで重要なのは、
柔軟性は“静止した状態”での能力にすぎないということ。

動いていないときには伸びても、実際に動きの中でその柔らかさを活かせなければ意味がありません。

▲ 柔軟性と可動域のちがいを一目で比較。混同しがちな2つの概念を整理しよう

🦴理論②|「可動域(ROM)」とは何か?動作の広さと機能性

「可動域(Range of Motion:ROM)」は、関節が動く範囲の広さを表します。
たとえば、膝がどこまで曲がるか、肩がどこまで上がるか、などです。

これは関節構造や靭帯、筋肉の長さ、神経の働きなど多くの要因に左右されます。

可動域には2種類あります。

  • 静的可動域(Passive ROM):外部の力で動かす最大範囲
  • 動的可動域(Active ROM):自分の筋肉で動かせる範囲

実は、ここが落とし穴。

🧩 柔軟性が高くても、動的可動域が狭ければ「動ける体」にはならないのです。

筋力やコントロール力がなければ、その柔軟性を動きに活かせないという現実があります。

▲ 静的と動的、2種類の可動域の違い。動ける体に重要なのは“動的”!

🚀「動ける柔軟性」を育てる3つのカギ

▲ “動ける柔軟性”を育てるための3要素。実際の動作と結びつけよう

🕺1. 動的ストレッチを取り入れよう

静的ストレッチ(伸ばして止める)は柔軟性を高めますが、
動的ストレッチは可動域を「動きの中」で使う練習になります。

例:

  • ランジウォーク
  • レッグスイング
  • 手を大きく振るダイナミックアームサークル

これにより、筋肉を使いながら可動域を広げることができます。

🧱2. 筋出力との連動を意識しよう

筋肉を「ただ伸ばす」だけでなく、コントロールしながら動かすことがポイント。

ヨガやピラティスのように、姿勢を保ちつつゆっくり動く練習は、
柔軟性と筋力、バランス感覚を同時に鍛えられる有効な手段です。

🎯3. 実際の動作で“使える”かチェックしよう

「柔らかさ」だけを競うのではなく、
ジャンプ、スクワット、階段の上り下りなど日常や競技の動きの中で可動域を意識してみましょう。

たとえば、

  • スクワットでしゃがむ深さをチェック
  • 肩まわしの滑らかさ
  • 歩幅が自然に大きく取れるか

これらがスムーズであれば、動ける柔軟性=モビリティが身についてきた証拠です。

🔑「柔らかい体」より、「使える体」を目指そう

  • ✔ 柔軟性=筋肉がどれだけ伸びるか
  • ✔ 可動域=関節がどこまで動くか+筋力と神経のコントロール
  • ✔ 柔らかいだけでは、動ける体とは限らない
  • ✔ 動的ストレッチと機能的トレーニングで“使える柔軟性”を育てよう

「体が硬いから…」とあきらめていた人も、
「私は柔らかいから大丈夫」と思っていた人も、
“動ける可動域”を手に入れることが、パフォーマンス向上やケガ予防の第一歩です。

今日からは、「どれだけ柔らかいか」ではなく、
「どれだけ使えているか?」という視点で、自分の体を見直してみませんか?

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📚 参考文献・出典

  • Behm, D. G., & Chaouachi, A. (2011). A review of the acute effects of static and dynamic stretching on performance. European Journal of Applied Physiology, 111(11), 2633–2651. https://doi.org/10.1007/s00421-011-1879-2
  • ISSA (2021). Mobility vs Flexibility – What’s the Difference? International Sports Sciences Association. Retrieved from https://www.issaonline.com/blog/index.cfm/2021/mobility-vs-flexibility
  • Verywell Health (2011). What Is Range of Motion? Retrieved from https://www.verywellhealth.com/what-is-range-of-motion-2696478

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