「格闘技は若い人のスポーツ」
そう思っていた時期が、私にもありました。
私は現在57歳。
これまで野球、ランニング、トライアスロンなど様々なスポーツに取り組んできましたが、格闘技とはほとんど縁のない人生でした。
きっかけは、意外なところにありました。
これまで私は、健康維持や体力向上のためにフィットネスジムにも通っていました。しかし、ある程度慣れてくると、どうしても「一人でトレーニングを続けること」に限界を感じるようになります。
今日は少し疲れているから軽めでいいか。
今日は忙しいから休もう。
そんな小さな言い訳が積み重なり、気づけばトレーニング頻度が落ちていく——。
多くの人が経験することではないでしょうか。
そんな時、以前から少し興味を持っていたキックボクシングジムの存在を思い出しました。
格闘技には
- 基本動作を一から学べる
- インストラクターが指導してくれる
- 他の会員と一緒に練習する
という特徴があります。
「一人で黙々とやる運動ではなく、みんなで取り組むトレーニング」
そこに魅力を感じ、思い切ってジムの扉を叩くことにしました。
正直に言えば、最初は少し不安もありました。
格闘技というと、どうしても
- 痛そう
- 怖そう
- 若い人ばかり
というイメージがあるからです。
しかし実際に通ってみると、その印象は大きく変わりました。
ジムには30〜40代を中心に、小学生から年配の方まで幅広い年齢層の会員がいます。
しかも女性会員が半分近くを占めています。
初心者向けのクラスでは、安全面にも配慮されており、相手にダメージを与えるような練習はありません。軽いタッチでの練習が基本で、いわゆる「本気のスパーリング」は行われません。
つまり、多くの人が想像するような「危険な格闘技ジム」とはまったく違う環境でした。
そんな環境でトレーニングを始めてから、半年が経ちました。
その間、私の体にはいくつもの変化が起こりました。
- 体重は76kgから72kgへ減少
- ポッコリお腹がすっきり
- 太ももと肩周りの筋肉が発達
- 股関節の柔軟性が改善
- 持久力の向上
しかし、最も印象的だったのは「体の使い方」が大きく変わったことです。
例えば、トレーニングを続ける中で、こんなことに気づくようになりました。
- パンチは腕ではなく脚で打つ
- キックは腕の振りが重要
- 呼吸のタイミングで体幹が安定する
- 股関節の柔軟性が動きの質を変える
これらは、キックボクシングに限らず、あらゆる運動に共通する身体の原理だと感じています。
そこで今回から、私の実体験をもとに「キックボクシングから学んだ体の使い方」について、シリーズ形式で紹介していこうと思います。
第1回となる今回は、まず「57歳でキックボクシングを始めて半年、体はどう変わったのか」についてお話しします。
🥊 57歳で始めたキックボクシング|半年間のトレーニング内容
私が通っているジムでは、トレーニングは基本的にインストラクターがメニューを組み立ててくれます。
そのため、日によって内容は少しずつ変わりますが、大まかな流れは次のようになっています。
①ウォームアップ(約10分)
まず最初に行うのが、シャドーボクシングやステップ練習、縄跳びなどのウォームアップです。
ここでは
- フットワーク
- リズム
- 重心移動
といった基本動作を確認します。
格闘技では、単純に手足を動かすだけでなく、体重の移動やバランスの取り方が非常に重要になります。
この段階で体を温めながら、動きの感覚を整えていきます。
②サンドバッグ(約20分)
次に行うのがサンドバッグトレーニングです。
ここでは
- パンチ
- キック
- コンビネーション
などを繰り返し練習します。
サンドバッグは、自分のペースで打ち込めるため、フォームを確認しながら動作を反復するのに適しています。
ただし、キックボクシングを始めたばかりの頃は、このサンドバッグで最初の痛みを経験しました。
それは「拳」です。
サンドバッグにパンチを打ち込むと、拳の中指や小指に強い衝撃がかかります。慣れていない状態では、この衝撃がかなり痛く感じました。
そこで購入したのが、バンデージインナーグローブです。
これを使うことで拳の保護ができ、安心してパンチ練習ができるようになりました。
③ミット打ち(約20分)
キックボクシングのトレーニングの中でも、最も強度が高いのがミット打ちです。
インストラクターが持つミットに対して
- パンチ
- キック
- コンビネーション
を打ち込んでいきます。
この練習は、非常に実践的である一方、体力的にはかなりきついトレーニングでもあります。
特に最初の頃は、1分を超えるミット打ちが非常につらく感じました。
呼吸はすぐに乱れ、肩周りはパンパンになり、ファイティングポーズで腕を上げ続けることすら難しくなります。
原因ははっきりしていました。
パンチを「腕の力」で打っていたからです。
キックボクシングでは、本来「脚 → 体幹 → 腕」という流れで力を伝えます。
しかし初心者のうちは、この感覚が分からないため、どうしても腕力に頼ってしまいます。
その結果、肩が疲れ、スタミナも無駄に消耗してしまうのです。
④筋力トレーニング(約10〜30分)
最後に行うのが筋力トレーニングです。
通常の60分クラスでは、10分程度の軽い筋トレを行いますが、90分クラスでは高強度インターバルのサーキットトレーニングが追加されます。
このサーキットトレーニングは、かなりハードです。
最初の頃は、インストラクターの動きについていくことすらできませんでした。
しかし、このトレーニングのおかげで、キックボクシングは単なる格闘技ではなく、非常に優れた全身トレーニングであることを実感しました。
サンドバッグ、ミット、筋トレの比率を大まかに表すと、サンドバッグ:ミット:筋トレ = 1 : 1 : 2という感覚です。
つまりキックボクシングは、打撃練習だけではなく、筋力トレーニングの要素も非常に強いスポーツなのです。
次の章では、「半年で体に起きた具体的な変化」について詳しく紹介していきます。
⚡ キックボクシング半年で体に起きた7つの変化
キックボクシングを始めて半年。
トレーニングを続ける中で、体にはいくつもの変化が起こりました。
正直に言うと、最初の3ヶ月ほどは「思ったほど変わらない」というのが実感でした。
しかし、4ヶ月目を過ぎた頃から、
体の感覚が明らかに変わり始めたのです。
ここでは、実際に感じた変化を紹介します。
① 体重が76kg → 72kgに減少
キックボクシングを始めた当初、体重は76kgでした。
現在は72kg前後。
半年で約4kg減少しています。
ただし、興味深いのは最初の3ヶ月はほとんど体重が変わらなかったことです。
食事は基本的に変えていません。
唯一意識しているのは、午後からトレーニングがある月・火・水曜日は昼食を軽めにすることくらいです。
というのも、普通に昼食をとると、ミット打ちの最中に吐きそうになるほど強度が高いからです。
つまり体重減少は、特別な食事制限ではなく、
トレーニングそのものによる変化と言えます。
② ポッコリお腹が明らかに改善
体重以上に大きな変化を感じたのが、お腹周りです。
キックボクシングを始める前は、いわゆる「ポッコリお腹」の状態でした。
しかし半年続けると、腹筋のラインが少しずつ見えるようになりました。
トレーニングウェアのサイズも、
Lサイズ → Mサイズに変わりました。
体重だけを見ると4kgの減少ですが、体型の変化はそれ以上に大きいと感じています。
③ 大腿四頭筋と肩まわりの筋肉が発達
周囲の人から一番言われるのが、
「太ももが大きくなった」ということです。
キックボクシングでは、
- キック動作
- ステップワーク
- スクワット系の筋トレ
など、下半身を使う動作が非常に多くあります。
そのため、大腿四頭筋の発達はかなり顕著です。
また、パンチ動作を繰り返すことで、肩周りの筋肉も発達しました。
久しぶりに会った友人からは
「肩周りが大きくなった」
と言われることもあります。
④ リズム感が明らかに向上した
これは始めるまで想像していなかった変化です。
キックボクシングでは、
- ステップ
- パンチ
- キック
を一定のリズムで繰り出します。
さらにコンビネーションになると、
動作のリズムが非常に重要になります。
練習を続けるうちに、自然と体がリズムを覚えていきました。
今では動きのテンポが以前よりもかなり良くなったと感じています。
⑤ 股関節の柔軟性が改善
私にとって特に大きな変化が、股関節の柔軟性です。
実は私は以前、左股関節を怪我したことがあり、可動域がかなり制限されていました。
そのため、正直なところ
「もう柔らかくなることはないだろう」
と半ば諦めていました。
しかしキックボクシングでは、キック動作を行うために股関節の可動域が非常に重要になります。
そのため、ジムに通い始めてからは、
毎日ストレッチを行うようになりました。
すると数ヶ月後、明らかに股関節の動きが改善していることに気づいたのです。
これは予想外の大きな収穫でした。
股関節の硬さは、キックだけでなく走りやすさや腰の負担にも影響します。あわせてこちらもどうぞ。
⑥ 4ヶ月目から持久力が急に向上
もう一つ印象的だったのが、持久力の変化です。
キックボクシングを始めた最初の頃は、
1分を超えるミット打ちがとてもきつく感じました。
呼吸はすぐ乱れ、肩もパンパンになります。
しかし4ヶ月ほど経った頃、
体の感覚が明らかに変わりました。
現在では
2分のミット打ちを4ラウンド
続けても、以前ほどきつさを感じなくなっています。
また、キックの動作も変わりました。
最初の頃は力任せに蹴っていましたが、
今では力を抜いた状態でも強く蹴れるようになりました。
これは体力が上がっただけではなく、
無駄な動きや力みが減ったことも大きな理由だと思います。
持久力の向上には、感覚だけでなく運動強度の考え方も重要です。心肺機能の土台づくりに興味がある方は、こちらもおすすめです。
⑦ 体の使い方が変わった
そして半年続けて一番大きな変化は、
体の使い方そのものが変わったことです。
トレーニングを続ける中で、次のようなことに気づきました。
- パンチは腕ではなく脚で打つ
- キックは腕の振りが重要
- 呼吸で体幹が安定する
- 重心の位置が動きの効率を左右する
これらはキックボクシング特有の技術というより、
人間の体の動きそのものに関わる原理のように感じています。
そしてこの気づきは、ランニングや他のスポーツにも応用できるものでした。
次回の記事では、この中でも特に印象的だった
「パンチは脚、キックは腕」
という体の使い方について、詳しく解説していきます。
🤔 初心者の頃に苦労したこと
ここまで読むと、「半年でかなり順調に変化している」と感じるかもしれません。
しかし、最初からうまくいっていたわけではありません。
むしろ最初の頃は、思うように体が動かず、何度も「これは難しいスポーツだな」と感じました。
特に苦労したのは、体の使い方です。
① 重心の位置が分からない
キックボクシングを始めてまず戸惑ったのが、重心の位置でした。
パンチやキックを打つときには、体重をどこに乗せるのか、どのタイミングで移動させるのかが重要になります。
しかし初心者の頃は、この感覚がまったく分かりません。
結果として、動きがぎこちなくなり、必要以上に体力を使ってしまいます。
ミット打ちではすぐに息が上がり、思った以上にスタミナを消耗していました。
② 腕力に頼るパンチ
もう一つ苦労したのが、パンチの打ち方です。
初心者の頃は、どうしても腕の力だけでパンチを打ってしまう傾向があります。
そうすると、すぐに肩周りが疲れてしまいます。
特にきつかったのが、ファイティングポーズで腕を上げ続けることでした。
パンチを打つたびに肩に力が入り、すぐに腕が下がってしまうのです。
しかし練習を続ける中で、徐々に理解してきました。
パンチは腕で打つものではなく、
脚と体幹の動きで打つものだということです。
この感覚が少しずつ分かるようになると、肩の疲労も大きく減っていきました。
③ ミット打ちの強度の高さ
キックボクシングのトレーニングの中で、最もきついのがミット打ちです。
インストラクターの動きに合わせてパンチやキックを出し続けるため、運動強度はかなり高くなります。
最初の頃は、1分を超えるミット打ちが非常につらく感じました。
呼吸はすぐ乱れ、肩も脚も重くなります。
特にコンビネーションが続くと、動きについていくだけで精一杯でした。
しかし、このミット打ちのおかげで、キックボクシングが単なる打撃練習ではなく、全身を使った高強度トレーニングであることを実感しました。
④ 最初に経験した痛みは「拳」
もう一つ印象的だったのが、最初に経験した痛みです。
それは意外にも、キックではなく拳でした。
サンドバッグにパンチを打つと、拳の中指や小指の部分に強い衝撃が伝わります。
慣れていない状態では、この衝撃がかなり痛く感じました。
そこで購入したのが、バンデージインナーグローブです。
拳を保護することで、安心してサンドバッグを打てるようになりました。
その後はキックによる脛の痛みなども経験しましたが、装備を工夫することで多くのトラブルは防ぐことができました。
⑤ それでも続けられた理由
初心者の頃は、うまく動けないことも多くありました。
それでもトレーニングを続けられた理由は、ジムの環境にあったと思います。
インストラクターや会員の方々とコミュニケーションを取りながら、同じメニューに取り組む。
その中で少しずつできることが増えていく。
この過程には、大きな達成感があります。
またトレーニングを通して、自分の体に対する理解も深まりました。
これまで気づかなかった体の反応や、ケアの重要性にも向き合うようになりました。
キックボクシングは単なる運動ではなく、体と向き合う時間でもあると感じています。
そして練習を続ける中で、ある興味深い気づきが生まれました。
それが
「パンチは脚、キックは腕」
という体の使い方です。
次回は、この気づきについて詳しく解説していきます。
💡 50代トレーニングで大事にしていること
キックボクシングを始めて半年。
体力や体型の変化も大きな収穫でしたが、もう一つ大きな気づきがありました。
それは、「継続できる強度でトレーニングすること」の大切さです。
現在、私はキックボクシングのトレーニングを週6〜7日行っています。
「そんなにやって大丈夫なの?」と思われるかもしれません。
しかし私が意識しているのは、
常に全力で追い込まないことです。
トレーニング強度は、おおよそ70〜80%を目安にしています。
この強度であれば
- 翌日に大きな疲労を残さない
- ケガのリスクを下げられる
- 長く継続できる
というメリットがあります。
特に50代以降のトレーニングでは、
「強度」よりも「継続」が重要だと感じています。
「頑張る」より「続ける」を優先したい方へ。回復の考え方を知っておくと、トレーニングの質はさらに上がります。
もちろん、トレーニングを続けていると体のどこかに痛みが出ることもあります。
私自身もこれまでに
- 脛の打撲
- ふくらはぎやハムストリングスの軽度の肉離れ
- 腰痛(軽いぎっくり腰)
- 拳の痛み
などを経験しました。
しかし、強度を調整しながらトレーニングを続けることで、今のところ大きなケガにはつながっていません。
また、体のケアにも意識を向けるようになりました。
例えばトレーニング後には、マッサージガンを使って
- 臀部
- ハムストリングス
- ふくらはぎ
などをほぐしています。
このようなケアを行うことで、翌日の疲労感がかなり軽減されるようになりました。
トレーニングと同じくらい、
回復とケアも重要だと実感しています。
🥊 キックボクシングは「動ける体」を作る
キックボクシングを始めて半年。
振り返ってみると、体にはさまざまな変化がありました。
- 体重76kg → 72kg
- ポッコリお腹の改善
- 太ももと肩の筋肉の発達
- 股関節の柔軟性向上
- 持久力の向上
しかし、それ以上に大きな変化は
体の使い方を意識するようになったことです。
キックボクシングでは
- 重心の位置
- 体重移動
- 体幹の使い方
- 呼吸のタイミング
など、全身の動きを連動させることが求められます。
つまりキックボクシングは、単なる格闘技ではなく、
体の使い方を学ぶトレーニングでもあるのです。
そして練習を続ける中で、ある興味深いことに気づきました。
それが
「パンチは脚、キックは腕」
という体の使い方です。
一見すると不思議な言葉ですが、これは運動の本質を表しているように思います。
実はこの考え方は、キックボクシングだけでなく
- 野球
- ゴルフ
- ランニング
- あらゆるスポーツ
にも共通する体の原理です。
次回の記事では、この
「パンチは脚、キックは腕」
という体の使い方について、運動の仕組みとあわせて解説していきます。
- 第1回:57歳でキックボクシングを始めて半年|体に起きた7つの変化(この記事)
- 第2回:パンチは脚、キックは腕|運動連鎖の科学
- 第3回:股関節が柔らかくなると動きが変わる理由
- 第4回:呼吸で体幹が変わる|キックボクシングで学んだ腹圧の使い方
- 第5回:キックボクシングは最強のクロストレーニングか?

